#020『農地に農業用倉庫を建てたい!』
農地に農業用倉庫を建てたい!農地転用は必要?不要?
目次
農地に農業用倉庫を建てる際の注意点を解説
農地に「倉庫」を建てたいと考えたとき、まず頭をよぎるのは「農地転用」ではないでしょうか。「農業用」の倉庫なら転用手続きは不要では?と思われるかもしれません。「家庭用」ならどうなるの?といった疑問を持つ方は少なくありません。
こんにちは。福岡・博多駅徒歩1分の行政書士事務所 『LEGAL BASE』 代表のSanukiです。
この記事では、農地に倉庫を建てる際の農地転用の要不要について、ケース別に解説します。
1.そもそも「農地転用」とは?
農地転用とは、田んぼや畑などの農地を、農地以外の目的で利用するために形質を変えることです。具体的には、宅地、駐車場、資材置き場、そして今回のテーマである倉庫の敷地などに変更することを指します。農地は国民の食料生産の基盤であり、むやみに減少させないよう「農地法」という法律で厳しく管理されています。この農地法に基づき、農地を農地以外の目的で利用する場合は、原則として都道府県知事の許可が必要となります。
知っておきたい3つの法律
農業用倉庫を建てるときに関係してくる法律は主に3つあります。
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1.農地法 農地法は、貴重な農地が無秩序に減ってしまわないよう保護している法律です。農地は農地法のルールに従って適法に手続きをする必要があります。いわば農地を守る法律です。
2.都市計画法 都市計画法は、計画的な街づくりを進めるための法律です。地域や開発する面積によって制限やルールが決められています。
3.建築基準法 建物の安全性を確保するため、一定規模以上の建物には建築確認が必要になります。これは、農地というよりは単純に安全な建物を建てるための法律です。
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2.倉庫敷地の大きさで変わる手続き
農業用倉庫を建てる際の手続きは、倉庫の大きさによって大きく変わります。厳密には、倉庫の敷地となる大きさが基準となります。敷地「200㎡」を基準として、対応に違いが出てきます。
200㎡未満の倉庫の場合
農地法の手続き
200㎡未満敷地の農業用倉庫であれば、農地転用の「許可」は必要ありませんが、農業委員会への「届出」が必要です。
根拠法令: 農地法施行規則第29条第1号
届出には以下の書類等が必要になります。(名称や書式は自治体によって異なります)
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200㎡以上の倉庫の場合
200㎡を超える敷地の倉庫を建てる場合は、農地転用の「許可」が必要になります。
根拠法令: 農地法第4条第1項、農地法 第5条第1項
許可申請では、届出よりもさらに詳しい書類の準備が必要で、審査も厳格になります。農業委員会での審査を経て、最終的に都道府県知事の許可を得る必要があります。

土地の場所による違い(都市計画の区分)
さらに農地が都市計画法上のどの区域にあるかによって、手続きが変わってきます。
<市街化区域内の農地>
市街化区域とは「既に市街地を形成している区域」や「概ね10年以内に市街化を図る区域」のことです。簡単にいうとお店や家などが多くある区域のことです。
農地法の手続き
市街化区域内の農地では、農地転用は「届出制」となります。市街化区域は、お店や家を増やしていくことが求められる区域なので、農地から宅地などに転用することは、むしろ積極的に進めるべきエリアといえます。したがって、「許可」制ではなく、簡易的な「届出」で済むという理屈です。
根拠法令: 農地法第4条第1項第7号、農地法第5条第1項第6号
届出には以下の書類等が必要になります。(名称や書式は自治体によって異なります)
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<市街化調整区域内の農地>
市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」として定められた区域です。
農地法の手続き
市街化調整区域では、農地転用には必ず「許可」が必要です。審査基準も厳しく、許可を得るためには農業用施設としての必要性をしっかりと証明する必要があります。市街化区域とは反対に、市街化に対して慎重な対応が行政に求められるため、「許可制」となっています。
申請には以下の書類等が必要になります。(名称や書式は自治体によって異なります)
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届出と比べて格段に必要な書類が増えていることがお分かりかと思います。
<都市計画区域外の農地>
都市計画区域外では、市街化調整区域と同様の農地法の手続きが必要です。

3.手続きの進め方
まずは現状把握から
農業用倉庫を建てたいと思ったら、まず以下のことを確認しましょう。
- 農地の場所の確認:市街化区域なのか、市街化調整区域なのか等
- 建てたい倉庫の大きさ:敷地が200㎡未満になるか、それ以上か
- 農地の現況:実際に農業に使っているか、土地の形状、権利関係
手続きの基本的な流れ
Step 1:事前相談
農業委員会や市町村の担当窓口で事前相談を行います。ここで必要な手続きの全体像が見えてきます。
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Step 2:農地法の手続き
- 200㎡未満:農業用施設届出
- 200㎡以上:農地転用許可申請
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Step 3:その他の法令手続き
- 必要に応じて開発許可申請
- 必要に応じて埋蔵文化財に関する届出手続
- 建築確認申請
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Step 4:建築工事
すべての許可・届出が完了してから工事開始
4.よくある質問と注意点
Q.「農業用」であれば何でも建てられる?
A.農業用の建物であっても、農地転用の手続きは必要です。また、倉庫の用途は農業に直接関係するものに限定されます。
Q.土地の面積を調べたら200㎡を超えていました。これは「許可」申請になる?
A.土地の面積が200㎡以上であっても、「届出」手続にすることは場合によっては可能です。ただし、「分筆」や「敷地面積の考え方」などについて、具体的に掘り下げて考えていく必要があるため、ここでは割愛します。詳細をお聞きしたい場合は、個別にお尋ねください。
Q.自分で手続きできる?
A.法律上は可能ですが、実際には以下のような専門的な作業が必要になります。
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特に図面作成については、手書きの簡単な図面では受理されないことが多く、CADソフト等を使った正確な図面が求められます。
Q.手続きにかかる時間は?
A.おおよそ以下のような期間です。
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対象となる倉庫の大きさや配置などについて、農業委員会・行政書士・倉庫建築会社・設計事務所・お施主様で並行して打合せをして、統一的な図面や配置図を作成する必要になるため、目安としてお考え下さい。
手続きの準備期間も含めると、時間がかかる可能性を考慮しておく必要があります。

5.まとめ
農地に農業用倉庫を建てる手続きは、倉庫の規模と農地の立地によって大きく変わります。
「自分の農地だから簡単」と思いがちですが、実際には農地は法律でしっかりと守られており、適切な手続きを経ることで初めて建築が可能になります。
計画的に進めれば決して不可能ではありませんが、法的な落とし穴もあるため、不安な場合は農地転用に詳しい行政書士に相談することをお勧めします。適切な手続きを経て、営農に必要な施設を安心して建設しましょう。
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当事務所では、農地転用の届出・許可申請手続を代行しております。 福岡県の農地転用・農地法のお手続きは、LEGAL BASE行政書士事務所にご相談ください。 初回相談は無料となっております。概算のお見積りも致しますので、まずは、お気軽にお問い合わせください。 また、福岡県内で人気の農業用倉庫メーカー様や、倉庫の設計の得意な設計事務所様もご紹介できます。 |
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