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#16『車の相続手続』

車の相続手続に必要な書類と流れについて

 

LEGAL BASE行政書士事務所のSanukiです。

 

家族が亡くなった際は、不動産や預金だけでなく自動車も「相続財産」として扱われます。民法896条では「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されており、自動車の所有権も含まれます。

 

車の相続手続きを怠ると、売却や廃車ができないだけでなく、自動車税の支払い義務が宙に浮いた状態になってしまいます。適切な手続きを行いトラブルを避けましょう。

 

今回、車の相続で必要になる手続きについて解説します。

1.相続人の確定

 

まず、誰が車を相続するかを決める必要があります。相続人が複数いる場合は、以下の方法で決定します。

a.遺言書による指定:故人が遺言で相続人を指定している場合

b.遺産分割協議:相続人全員で話し合って決める場合

c.法定相続:民法で定められた相続分に従う場合

 

 

2.自動車の名義変更手続き

 

車の相続が決まったら、速やかに運輸支局で名義変更手続きを行います。

道路運送車両法第13条第1項では「所有者の変更があったときは、15日以内に移転登録の申請をしなければならない」と規定されていますが、相続の場合は「所有者の変更があった日」がいつかが不明確です。相続人が複数いる場合、遺産分割協議が成立するまで相続人全員の共有財産となるためです。

 

実務上、相続による車の名義変更に特定の期限は設けられていませんが、売却や廃車手続きができないなどの不便が生じるため、相続人が確定次第速やかに手続きを行うことが望ましいです。

 

手続きを行う場所

◆ 新しい所有者の住所地を管轄する運輸支局

◆ 軽自動車の場合は軽自動車検査協会

 

 

 

3.相続による名義変更に必要な書類

基本的な必要書類

◆ 自動車検査証(車検証)

◆ 自動車損害賠償責任保険証明書

◆ 新所有者の印鑑登録証明書(発行から3か月以内)

◆ 新所有者の実印

◆ 手数料納付書

◆ 自動車税・自動車取得税申告書

 

+相続関係を証明する書類

 

相続人の数や状況により、必要な書類が異なります

 

パターン1  相続人が1人の場合

◆ 戸籍謄本(被相続人の死亡と相続人との関係がわかるもの)

 

パターン2 相続人が複数で遺産分割協議を行った場合

◆ 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)

◆ 相続人全員の印鑑証明書

◆ 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)

◆ 相続人全員の戸籍謄本

 

 

パターン3  遺言書がある場合

◆ 遺言書

◆ 検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)

 

 

 

4.車の価値による手続きの違い

 

100万円以下の車の場合

 

自動車の価値が100万円以下の場合、手続きが簡略化されます。

◆ 遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」で可能

◆ 相続人全員の印鑑登録証明書が不要

◆ 手続きが大幅に簡素化される

 

 

この特例は、相続手続きの負担軽減を目的として設けられています。

 

価値の算定方法

 

車の価値は以下で判断されます。

◆ 中古車価格ガイド(レッドブック等)

◆ 自動車販売店の査定書

◆ 日本自動車査定協会の査定

 

 

5.相続放棄をする場合の注意点

 

相続放棄をする場合でも、車の管理責任は残ります。民法940条では「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と規定されています。

 

相続放棄時の対応

◆ 速やかに次の相続人に引き継ぐ

◆ 引き継ぎまでは適切に管理する

◆ 勝手に処分してはいけない

 

 

6.自動車税の取り扱い

 

課税のタイミング

 

自動車税は毎年4月1日時点の所有者に課税されます。相続による名義変更が4月2日以降であっても、その年度の自動車税は被相続人に課税されることになります。

 

支払い義務

 

故人名義で課税された自動車税の支払い義務は相続人が負います。相続人が複数いる場合は、相続財産の一部として扱われ、遺産分割の対象となります。実際の負担方法は相続人間で協議して決めることになります。

 

よくあるトラブルと対処法

◆トラブル1:相続人間での意見の対立

対処法:第三者(弁護士等)を交えた調停や、家庭裁判所での調停を検討

 

◆トラブル2:必要書類の不備

対処法:事前に運輸支局に確認し、書類リストをもらっておく

 

◆トラブル3:期限内に手続きができない

対処法:やむを得ない事情がある場合は、運輸支局に相談する

 

 

7.手続きの流れと期限

  1. 相続発生
  2. 相続人の確定(なるべく早く)
  3. 必要書類の準備(1~2週間程度)
  4. 運輸支局での手続き(相続発生から15日以内)
  5. 自動車保険の変更手続き(速やかに)

 

 

8.まとめ

 

車の相続は複雑に思えますが、必要な書類を整え、適切な手順を踏めば問題なく完了できます。重要なポイントは

 

◆ 15日以内の名義変更は法的義務

◆ 車の価値により必要書類が変わる

◆ 相続人全員での合意が必要(複数相続人の場合)

◆ 自動車税の取り扱いも忘れずに

 

 

相続手続きは一度しか経験しない方が多いため、不明な点があれば専門家に相談することをお勧めします。適切な手続きを行い、故人の遺産を円滑に引き継ぎましょう。

 

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