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#013『戸籍とフリガナ』

【2025年5月26日開始】戸籍のフリガナ記載が義務化!新制度を解説 手続き、ルール、キラキラネームへの影響は?

 

LEGAL BASE代表のSanukiです。

 

日本の戸籍制度に大きな変化が訪れました。改正戸籍法の施行により、全ての国民の戸籍に氏名の「フリガナ」が記載されることになります。

 

これまで住民票にはフリガナがありましたが、法的な裏付けを持つ戸籍には記載がありませんでした。この変更は、単に読み方が加わるというだけでなく、私たちの社会生活や行政手続きにさまざまな影響を及ぼします。

 

 

我々のような士業も戸籍にフリガナがあると大変助かります。

 

現状、役所に戸籍の請求をして、役所から何らかの問合せの際には、

 

役所「このあさみ(麻美)さん?の分まで必要ですか?」

私「あさみさん?…あー(たぶん)まみ(麻美)さんですね、それ。」

 

役所「あともう一人、長女様の名前、これなんとお読みするんでしょうか?その方の分も必要ですか?」

私「あー…ゆきこ(幸子)さんか、さちこ(幸子)さんかだと思うのですが、そちらもお願いします。」

 

みたいなやり取りは日曜茶飯事です。

 

 

では、なぜ今、戸籍にフリガナが必要になったのでしょうか?そして、私たちは何をすればよいのでしょうか?

 

この記事では、戸籍のフリガナ記載新制度について、その背景から具体的な手続き、注意点まで、網羅的に詳しく解説します。

 

 

 

 

戸籍フリガナ新制度の概要

 

まずは、新制度の概要を把握しておきましょう。

施行日 2025年(令和7年)5月26日
変更点 全ての国民の戸籍に、氏名の「読み方」がカタカナで記載される。
対象者 日本の戸籍を持つ全国民(既に戸籍がある人、これから生まれる子を含む)。
目的 氏名の読み方を公的に確定させ、行政サービスの向上や社会生活上の混乱を防ぐ。

 

 

この制度が導入されることで、氏名の読み方が初めて法的に定められ、公的な証明力を持つことになります。

 

 

なぜ今、戸籍にフリガナが?制度導入の3つの背景

 

長年変わらなかった戸籍制度が、なぜこのタイミングで大きく動いたのでしょうか。その背景には、現代社会が抱える3つの課題があります。

 

 

背景1:多様化する名前の読み方と社会的な混乱

 

近年、「キラキラネーム」に代表されるように、漢字本来の読み方や意味とは異なる、個性的な名前が増加しました。

 

親が子を想う気持ちの表れである一方、名前の読み方が本人以外には分からないというケースが増え、行政窓口や医療機関、金融機関などで本人確認がスムーズに行えず、社会的な混乱を招く一因となっていました。戸籍に公的なフリガナを記載することで、こうした混乱を解消する狙いがあります。

 

 

 

 

背景2:行政手続きのデジタル化(DX)推進

 

政府が推進する行政のデジタル化、特にマイナンバー制度の活用において、個人の正確な情報管理は不可欠です。しかし、氏名の読み方が統一されていない現状は、データ連携の大きな障壁となっていました。

 

戸籍にフリガナが記載され、マイナンバーと正確に紐づけられることで、各種行政手続きのオンライン化やワンストップ化が加速し、国民の利便性向上が期待されます。

 

 

 

背景3:本人確認の正確性向上とグローバル化への対応

 

金融機関での口座開設やパスポートの申請など、正確な本人確認が求められる場面は数多くあります。フリガナが戸籍で一意に特定されることで、複数の読み方を使ったなりすましや、各種規制を逃れるといった不正行為の防止につながります。

 

また、パスポートのローマ字表記との整合性を図るなど、グローバル化に対応した身分証明制度を確立する上でも、フリガナの公的な記録は重要な役割を果たします。

 

 

 

新制度のメリットとデメリット

 

この新制度は、私たちにどのような影響を与えるのでしょうか。メリットとデメリットを整理しました。

 

メリット

  • 氏名の読み方が公的に証明される: 各種手続きで読み方を何度も説明したり、間違えられたりする手間がなくなります。
  • 行政手続きがスムーズになる: マイナンバーカードとの連携により、役所などでの手続きが迅速かつ正確になります。
  • 本人確認の精度が向上する: 金融機関などでのなりすまし防止や、各種規制の潜脱行為を防ぐ効果が期待できます。

 

デメリット

  • 届出の手間がかかる場合がある: 自治体から通知されるフリガナが、自身の認識と異なる場合には届出が必要です。
  • 読み方の変更が原則できなくなる: 一度登録されたフリガナを変更するには、家庭裁判所の許可が必要となり、手続きが非常に厳格になります。
  • 通称や俗称が認められない可能性がある: これまで便宜的に使用してきた読み方が、公的なフリガナとしては認められない場合があります。

 

 

私たちがやるべき手続きは?

 

ここが最も重要なポイントです。あなたの状況によって、必要な対応が異なります。

 

 

すでに戸籍がある方(2025年5月26日以前から)

 

原則として、急いで手続きをする必要はありません。

 

  1. 自治体からの「フリガナの通知」を待つ 2025年5月26日以降、本籍地の市区町村から、戸籍の筆頭者宛に「戸籍に記載される予定のフリガナの通知書」が郵送されます。この通知書には、住民票のデータなどをもとにした、あなたの氏名のフリガナが記載されています。

 

  1. 通知されたフリガナを確認する 通知書が届いたら、記載されているフリガナがご自身の認識している正しい読み方と一致しているか確認してください。

 

  1. 対応は2パターン
    • フリガナが正しい場合 → 手続きは不要です。

何もしなければ、2026年5月26日以降に通知されたフリガナが自動的に戸籍に記載されます。

 

    • フリガナが違う、または希望する読み方と異なる場合 → 届出が必要です。 施行日から1年以内(2026年5月25日まで)に、正しいフリガナの届出を行う必要があります。この期間を過ぎると、一度職権で記載されたフリガナを変更するには家庭裁判所の許可が必要になるため、必ず期間内に手続きをしましょう。

【届出の方法】

  • 市区町村の窓口に持参又は郵送
  • 本籍地の市区町村へ持参又は郵送
  • マイナンバーカードを利用したオンライン申請(マイナポータル)

 

これからお子様が生まれる方(2025年5月26日以降)

これから生まれるお子様については、出生届に「読み方」を記載する欄が新設されます。ここに記載したフリガナが、そのまま戸籍に登録されます。後述するフリガナのルールに沿った読み方を記載する必要があります。

 

 

気になるフリガナの「ルール」とQ&A

では、どのようなフリガナでも登録できるのでしょうか。法務省は一定のルールを定めています。

 

Q1. どんな読み方でもOK?認められないケースは?

A1. 氏名の読み方として、「氏名に用いられる文字の読み方として一般に認められているもの」でなければならないとされています。具体的には、以下のようなケースは認められない可能性があります。

 

  • 漢字の意味と著しく異なる読み方(例:「高」を「ひくし」、「太郎」を「じろう」)
  • 漢字に異なる別の単語を付加する読み方(例:「健」を「ケンイチロウ」など)
  • 公序良俗に反する読み方(例:悪魔「あくま」など)

 

 

一方で、漢字辞典に載っている読み方や、これまでの社会で広く受け入れられてきた慣習的な読み方は尊重されます。

 

 

Q2. いわゆる「キラキラネーム」は付けられなくなる?

 

A2. 一定の制限がかかる可能性があります。漢字の意味や音との関連性が全くない、極端に奇抜な読み方は認められない方向です。ただし、どこまでが許容範囲かは個別の判断となり、社会通念上許容されうる範囲については、法務局や市区町村の窓口で判断されることになります。

 

 

Q3. 一度登録したフリガナは変更できる?

 

A3. 原則として変更できません。 今回の届出をして戸籍に記載されたフリガナを変更するには、「正当な事由」があるとして家庭裁判所の許可を得る必要があります。これは、名の変更と同様に非常にハードルが高い手続きです。そのため、最初の届出や確認が極めて重要になります。

 

Q4. 届出をしなかったらどうなる?

A4. 2026年5月25日までに届出がなかった場合、市区町村が住民票などをもとに確認した読み方を「職権」で戸籍に記載します。この職権で記載されたフリガナについては、1回に限り、家庭裁判所の許可なしに届出で変更することが可能です。しかし、意図しない読み方が登録されるリスクを避けるためにも、通知の確認と必要に応じた届出を推奨します。

 

Q5. 相談したい場合はどこに?

A5. ご自身のフリガナの届出に関する具体的な相談は、本籍地またはお住まいの市区町村役場の戸籍担当窓口になります。制度全般に関する問い合わせは、法務局でも受け付けています。

 

 

まとめ:未来へつなぐ、大切な名前の第一歩

 

戸籍へのフリガナ記載は、私たちの生活に密接に関わる重要な制度変更です。最後に、本制度のポイントをまとめます。

 

  • 2025年5月26日、戸籍へのフリガナ記載が義務化される。
  • すでに戸籍がある人は、自治体から届く「フリガナの通知」を必ず確認する。
  • 通知のフリガナが違えば、2026年5月25日までに届出が必要。
  • 一度登録したフリガナの変更は、家庭裁判所の許可が必要なほど困難。
  • 名前の読み方には一定のルールが設けられ、キラキラネームには制限がかかる可能性も。

 

この新制度は、多様化する社会の中で、個人の名前を正確に公的に証明するための大きな変化となります。我々のような士業や戸籍を扱う仕事(金融機関、証券会社、保険会社など)に従事していない限り、普段、戸籍を見ることや取得することはほとんどないと思いますが、今一度ご自身の、そしてご家族の大切な名前について考えてみてはいかがでしょうか。

 

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