#034『自筆証書遺言保管制度とは?』
福岡・博多駅徒歩1分の行政書士事務所 『LEGAL BASE』 代表のSanukiです。
大切な家族に財産をどう残すか。多くの方が一度は考えたことがあるテーマでしょう。遺言書を書きたいけれど、公証役場に行くのは面倒だし、自宅で保管するのも不安…そんな悩みを解決してくれるのが、2020年7月に始まった「自筆証書遺言保管制度」です。
この制度を使えば、自分で書いた遺言書を法務局が安全に保管してくれるうえ、相続時の手続きも簡単になります。今回は、この制度の仕組みから実際の利用方法まで、わかりやすくお伝えします。
自筆証書遺言保管制度とは?費用やメリット・デメリットを解説
目次
自筆証書遺言保管制度の基本
自筆証書遺言保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局に預けられる制度です。令和2年7月10日に導入されました。これまで自筆証書遺言は自宅保管が一般的でしたが、紛失や改ざんのリスクがありました。
法務局が公的機関として保管することで、遺言書の安全性が格段に向上します。しかも一度預けてしまえば、50年間しっかり保管してもらえます。相続が発生するまで、遺言者が安心して暮らせる環境が整うわけです。
気になる費用は?
この制度の大きな魅力が、そのリーズナブルな価格設定です。一度の手数料3,900円のみで、50年間の保管が保証されます。
公正証書遺言だと、財産の額によって変わりますが、数万円から十数万円の費用がかかることも珍しくありません。それと比べると、かなり経済的な選択肢といえるでしょう。年間保管料などもかからないので、長期的に見てもお財布に優しい制度です。

自筆証書遺言保管制度のメリット
この制度には、利用者にとって嬉しいポイントがいくつもあります。
1.改ざんや紛失の心配がない
最も大きなメリットは、法務局という公的機関が保管してくれる安心感です。自宅に置いておくと、誰かが勝手に開封したり、書き換えたりするリスクがゼロではありません。火災や災害で失われる可能性もあります。
法務局に預ければ、そうした心配から解放されます。相続人による改ざんも物理的に不可能になるため、遺言者の意思がそのまま実現される可能性が高まります。
2.形式面のチェックが受けられる
法務局で申請の手続きをする際に、職員が形式の不備がないかどうかを確認してくれるため、形式の不備を理由に無効とされるリスクが非常に小さくなります。
自筆証書遺言は書き方のルールが厳格で、日付がなかったり、押印を忘れたりすると無効になってしまいます。法務局の職員が外形的なチェックをしてくれるので、そういった単純なミスを防げます。
3.検認手続きが不要
通常、自筆証書遺言は家庭裁判所での「検認」という手続きが必要です。これが意外と手間で、相続人全員に通知を出したり、裁判所に出向いたりする必要があります。
保管制度を利用した遺言書なら、この検認が不要になります。相続が始まったら、すぐに銀行や法務局での手続きに入れるので、残された家族の負担が軽くなります。
4.遺言書の存在を通知してもらえる
遺言者が亡くなった後、あらかじめ指定された相続人や受遺者には法務局から自動的に遺言書の存在が通知されます。
せっかく遺言書を書いても、見つけてもらえなければ意味がありません。この通知制度により、遺言書が日の目を見ずに終わることを防げます。特に相続人が遠方に住んでいる場合などに便利です。

知っておきたいデメリット
良いことばかりのように見える制度ですが、いくつか注意点もあります。
1.内容まではチェックしてもらえない
法務局が確認してくれるのは、あくまで形式面だけです。「全文が自筆か」「日付はあるか」「押印されているか」といった外見的な部分はチェックしてくれますが、遺言の内容が法律的に適切かどうかまでは見てくれません。
たとえば、財産の分け方が不明確だったり、実現不可能な内容だったりしても、それは指摘されません。心配な場合は、事前に弁護士や司法書士といった専門家に相談してから作成するのがおすすめです。
2.本人が法務局に行く必要がある
保管の申請は、遺言者本人が法務局に出向いて手続きする必要があります。代理人による申請はできません。体が不自由な方や高齢で外出が難しい方にとっては、少しハードルが高く感じられるかもしれません。
ただし、予約制なので長時間待たされることはありませんし、職員が丁寧に対応してくれます。一度だけの手続きなので、頑張って足を運ぶ価値はあるでしょう。
3.修正には再申請が必要
遺言書の内容を変えたくなった場合、新しく書き直して再度保管申請をする必要があります。そのたびに3,900円の手数料がかかります。頻繁に内容を変更する可能性がある方は、その点も考慮しておくとよいでしょう。

公正証書遺言と比べてどう?
公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、内容の適法性まで担保されます。証人も立ち会うので、後から「本人の意思ではなかった」と争われるリスクも低くなります。
一方で、費用は財産額によって変わり、数万円から数十万円かかることも。また、公証役場との日程調整や証人の手配など、準備にも手間がかかります。
自筆証書遺言保管制度は、費用を抑えつつ、ある程度の安全性を確保したい方に向いています。シンプルな相続内容で、専門家に相談しながら自分で作成できる方には、コストパフォーマンスの高い選択肢です。
こんな人におすすめ
自筆証書遺言保管制度は、次のような方に特に適しています。
まず、できるだけ費用を抑えたい方。公正証書遺言の費用負担が気になる場合、3,900円で済むこの制度は魅力的です。
次に、シンプルな遺言内容の方。「自宅は妻に、預金は子どもたちで均等に」といった明確な内容なら、自分で作成しても問題になりにくいでしょう。
そして、遺言書の紛失や改ざんが心配な方。家族関係が複雑だったり、相続でもめる可能性がある場合、公的機関の保管は大きな安心材料になります。
最後に
相続は誰もが避けて通れない問題です。「まだ早い」と思っているうちに、いつの間にか時間は過ぎていきます。自筆証書遺言保管制度は、遺言書作成のハードルを下げてくれる便利な仕組みです。
大切なのは、自分と家族にとって何がベストかを考えること。費用や手続きの手間、家族構成や財産の内容など、総合的に判断して、最適な方法を選んでください。必要に応じて専門家の力も借りながら、後悔のない準備を進めていきましょう。
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