#032『清算型遺贈とは?』
福岡・博多駅徒歩1分の行政書士事務所 『LEGAL BASE』 代表のSanukiです。
相続が発生したとき、残された財産をどう分けるかは大きな問題です。特に、自宅などの不動産が財産の大半を占める場合、相続人が複数いると公平に分けることが難しくなります。そんなときに役立つのが「清算型遺贈」という方法です。
清算型遺贈とは?メリットと注意点をわかりやすく解説
清算型遺贈の基本
清算型遺贈とは、亡くなった方の不動産などを売却し、その代金を受遺者に配分する仕組みを指します。現物のまま相続するのではなく、いったん現金化してから分配するという点が特徴です。
これは、不動産の名義人が生前に遺言で、自分の財産の処分方法を決める方法であり、死後に相続人主導で決める方法とは異なります。
たとえば、子どもが3人いて自宅が6,000万円、預貯金が3,000万円という場合を考えてみましょう。このままでは不動産を共有名義にしない限り、3人で均等に分けることはできません。しかし清算型遺贈を使えば、不動産を売却して現金化した上で分配できるため、平等な相続が実現します。
また、遺言書に記載しておくことで、法定相続人以外の人にも財産を遺すことが可能です。お世話になった方へ感謝の気持ちとして遺産を残すといった使い方もできます。

清算型遺贈のメリット
1.公平な分配が可能
最大のメリットは、誰にでも公平に財産を分けられる点です。不動産のように分割が難しい財産でも、現金化すれば希望通りの割合で分配できます。相続人同士のトラブルを未然に防ぐ効果も期待できるでしょう。
2.共有名義を避けられる
不動産を共有名義にすると、その後の売却や活用に全員の同意が必要になり、思うように進まないケースが多々あります。清算型遺贈なら、相続の段階で換価してしまうため、共有名義にまつわるトラブルを回避できます。
3.相続人以外にも遺せる
通常の相続では法定相続人が対象ですが、遺言書で清算型遺贈を指定すれば、相続人以外の方にも財産を遺すことができます。
4.債務の清算を行える
遺産に債務(借金)がある場合、不動産を売却して現金化し、その代金から債務を弁済した残額のみを遺贈することで、受遺者にマイナスの財産を引き継がせるリスクを減らすことができます。

注意しておきたいポイント
1.遺言執行者の指定が必須
清算型遺贈を実行するには、遺言執行者の指定が不可欠です。遺言執行者は、故人の遺言内容を実現する役割を担います。
相続人の中から選ぶこともできますが、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に依頼する方が、手続きがスムーズに進みます。清算型遺贈では、一度相続人全員で共有名義にしてから売却する必要があるため、執行者を指定しておかないと協力が得られない可能性があります。
ここで重要なのが相続登記の手続きです。不動産を売却するには、まず被相続人名義から相続人名義への登記変更が必要です。登記の際の持分割合は、遺言書で最終的に受け取る割合ではなく、いったん法定相続分または遺言で指定された割合で共有登記をすることになります。執行者がいれば、単独で売却手続きを進められます。
2.売却価格が相場より安くなる可能性
不動産の売却には時間がかかります。遺言執行者の使命は、確実に財産を換価して相続人に配ることです。そのため、多少相場より安くても売却を優先する判断がされるケースがあります。
少しでも高く売りたいと考えるなら、清算型遺贈ではなく、相続人全員で共有登記をした上で時間をかけて売却する方法を検討した方がよいかもしれません。
3.売れない可能性もある
不動産は必ず売れるとは限りません。立地条件が悪かったり、権利関係が複雑だったりすると、買い手がつかないこともあります。売却できなければ現金化もできず、遺言通りの分配が実現できません。
不動産会社に依頼しても、亡くなってから売却まで相当な時間を要するケースもあります。
4.譲渡所得税の負担
不動産を売却すると、譲渡所得税が課税されます。購入時の価格と売却価格の差額が所得とみなされ、税金がかかる仕組みです。
特に、かなり昔に取得した不動産で購入時の価格が不明な場合、売却価格のほとんどが利益とみなされ、高額な税金が発生することがあります。この税金は、財産を受け取る相続人や受遺者が負担しなければなりません。譲渡所得税については、複雑なのでまた別の機会に個別に説明します。
5.相続税の課税と納付期限の問題
清算型遺贈を利用する際に見落としがちなのが、相続税の課税タイミングです。相続税の課税対象となるのは、あくまで相続開始時の評価額(路線価などで算定)であり、実際の売却価格ではありません。
相続税の申告と納付の期限は、相続開始から10か月以内です。この期限は、不動産が売れていようが売れていまいが変わりません。つまり、売却が完了していない状態でも、相続人は相続税を納める必要があります。
たとえば、相続財産の大半が不動産で、預貯金がほとんどない場合、売却代金で納税しようと考えていても、10か月以内に売却が完了しなければ、相続人は自己資金で納税しなければなりません。売却が長引くと、相続人が立て替えるか、借り入れをして納税する事態になる可能性もあります。

専門家への相談を検討しよう
清算型遺贈は、財産を公平に分けるための有効な方法ですが、手続きや税金の問題、納税資金の確保など、注意すべき点も多くあります。特に相続税の納付期限と売却完了のタイミングがずれる可能性を考慮し、早めの準備が重要です。
自分だけで判断するのが難しい場合は、士業の専門家に相談することをおすすめします。
相続税の申告は相続発生から10か月以内という期限があり、計算も複雑です。特に相続財産が基礎控除を超える場合は、専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ適切な相続手続きが実現できるでしょう。
遺言書の作成段階から専門家に相談しておけば、将来のトラブルを防ぎ、大切な財産を希望通りに引き継ぐことができます。
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