#029『期限別でみる相続手続』
福岡・博多駅徒歩1分の行政書士事務所 『LEGAL BASE』 代表のSanukiです。
相続が発生すると、故人の財産や負債を引き継ぐだけでなく、様々な法務的・税務的な手続きが必要になります。これらの手続きには厳格な期限が設けられており、これを過ぎると大きな不利益を被る可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、相続発生後にやるべき重要な手続きを期限別にまとめ、その詳細を解説します。
期限別でみる相続手続
目次
相続における重要な手続きの期限
まずは、相続開始を知った日(原則として亡くなった日)を基準とした、重要な手続きとその期限を一覧で確認しましょう。
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項目 |
期限 |
概要 |
担当機関 |
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相続放棄・限定承認 |
相続開始を知った日から3ヶ月以内 |
負債が多い場合などに、相続をしないことを選択する手続き |
家庭裁判所 |
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準確定申告・納税 |
相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内 |
故人の死亡した年1月1日から死亡日までの所得税の申告 |
税務署 |
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相続税の申告・納税 |
相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
遺産総額が基礎控除を超える場合に、税務署へ申告し納税する |
税務署 |
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相続登記の申請 |
不動産を取得したことを知った日から3年以内 |
不動産の名義を相続人に変更する手続き |
法務局 |
【3ヶ月以内】相続の選択
相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内は、相続人が故人の財産を引き継ぐか否かを決める重要な期間です。
相続放棄・限定承認の検討と申述
亡くなった方(被相続人)に借金などの負債が多い場合、その相続を一切しないという選択肢として相続放棄があります。相続放棄や限定承認(負債が財産の範囲内でのみ引き継ぐ)を選択する場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。
この期限内に特に手続きをしない場合、財産も負債もすべて引き継ぐ単純承認をしたとみなされます。負債が多い可能性がある場合は、3ヶ月という短い期間で故人の財産状況を迅速に調査することが極めて重要です。
| ポイント: 財産調査が間に合わない場合は、家庭裁判所に申し立てることで期間を延長(伸長)できる可能性もあります。 |

【4ヶ月以内】税金の清算
準確定申告と納税
故人が生前に確定申告を必要とする人だった場合、相続人が代わって所得税の申告・納税を行います。これが準確定申告です。
準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。故人の死亡した年1月1日から死亡日までの所得を清算するための手続きであり、相続税の申告よりも早く期限が到来するため、注意が必要です。

【10ヶ月以内】遺産分割と相続税
この期間には、遺産の分け方を決定する協議と、税金の申告という最も大きな手続きが集中します。
1.遺言書の検認
故人が遺言書を残していた場合、それが自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば、開封する前に家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認は、遺言書の偽造・変造を防ぎ、内容を相続人全員に確認させるために行われます。
| ポイント: 公正証書遺言の場合は検認不要です。自筆証書遺言等を発見した場合は速やかに(開封前に)家庭裁判所へ申立てを行いましょう。 |
2.遺産分割協議と協議書の作成
相続人が複数いる場合、誰がどの財産をどれだけ引き継ぐかを話し合いで決定します。その結果をまとめたのが遺産分割協議書です。
協議自体に法的な期限はありませんが、配偶者の税額軽減などの相続税の特例を適用するためには、後述の相続税の申告期限(10ヶ月)までに分割を確定させることが必要です。そのため、実質的にはこの10ヶ月以内に協議を完了させることを目指します。
3.相続税の申告と納税
相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円)を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。
この手続きの期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期限は厳守する必要があり、1日でも遅れると延滞税や加算税といったペナルティが課されます。
相続税の申告が必要な場合、かなり細かな財産調査を税理士主導で行う必要があります。調査には通常数か月単位の時間を要するので、大変だとは思いますが、相続開始してから速やかに動き始めた方が望ましいです。
| ポイント: 遺産分割が間に合わない場合でも、申告は一旦法定相続分で分割したものとして済ませる必要があります。 |

その他の重要な手続き
1.相続登記(不動産の名義変更)
不動産を相続した場合の名義変更手続きを相続登記といいます。以前は任意でしたが、2024年4月1日より申請が義務化されました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に法務局で登記申請が必要です。この期限を正当な理由なく怠ると、過料(罰金)の対象となる可能性があるため、注意すべき期限です。
2.金融資産等の名義変更
預貯金や株式などの名義変更や解約払い戻しには、法的な期限の定めはありません。しかし、遺産分割協議書や必要な戸籍謄本などが揃い次第、できるだけ早めに手続きを完了させることが、故人の資産を管理・活用するために望ましいです。
まとめ
相続手続きは期限がバラバラで複雑ですが、まずは期限の短い3ヶ月(相続の選択)と10ヶ月(相続税申告)を意識し、迅速に財産調査と遺産分割の準備を進めることが大事です。
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