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#026『小規模宅地等の特例とは』

福岡・博多駅徒歩1分の行政書士事務所 『LEGAL BASE』 代表のSanukiです。

 

相続税の負担を大幅に軽減できる「小規模宅地等の特例」。自宅や事業用の土地を相続する際、この制度を活用することで評価額を最大80%も減額できます。

 

本記事では、特例の仕組みから適用要件、注意点まで詳しく解説します。今回、場合分けや要件が細かいので、少し複雑になりますが、特例が適用できれば大幅な節税になるので、しっかりみていきましょう。

 

 

小規模宅地等の特例とは? 最大80%減額の要件と注意点

 

 

1.小規模宅地等の特例とは

 

小規模宅地等の特例は、被相続人が居住または事業に使用していた土地を相続する際、相続税評価額を大幅に減額できる制度です。この制度は、相続税の負担により家族が自宅や事業基盤を失うことを防ぐために設けられました。

 

 

2.特例の対象となる土地と減額率

 

小規模宅地等の特例は、土地の用途によって3つの区分に分かれており、それぞれ評価を減額できる限度の面積(限度面積)と減額率が異なります。

 

・特定居住用宅地等(住宅用)

・特定事業用宅地等(事業用)

・貸付事業用宅地等(賃貸用)

 

 

(1)特定居住用宅地等(住宅用)

  • 限度面積:330㎡
  • 減額率:80%
  • 対象:被相続人が居住していた土地、または生計を一にする親族が居住していた土地

 

 

(2)特定事業用宅地等(事業用)

  • 限度面積:400㎡
  • 減額率:80%
  • 対象:製造業、小売業、医療業などの事業用土地(貸付業は除く)

 

 

(3)貸付事業用宅地等(賃貸用)

  • 限度面積:200㎡
  • 減額率:50%
  • 対象:賃貸アパートや駐車場など、貸付事業に使用していた土地

 

 

今回は、事業や不動産の賃貸などをされていない一般的な家庭の場合である(1)特定居住用宅地等(住宅用)について、詳しくみていきます。

 

 

3.特定居住用宅地等

 

特定居住用宅地等とは

特定居住用宅地等は、被相続人や被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始直前まで居住用に使っていた宅地のことを指します。戸建て住宅や分譲マンションなどの自宅が建っている土地が該当し、借地権をはじめとした宅地の上にある権利も対象に含まれます。末尾に「等」が付いているのは、宅地だけではなく宅地の上にある借地権なども対象に含まれるためです。

 この要件を満たした上で、相続人の立場によってさらに細かい要件が設定されています。

 

 

特定居住用宅地等の適用要件

 

自宅の土地について特例を受けるには、相続人の立場によって要件が異なります。

 

 

<1> 配偶者が相続する場合

 

被相続人の配偶者が土地を取得した場合、居住要件や保有継続要件は一切ありません無条件で特例の適用を受けることができます。

 

 

<2> 同居親族が相続する場合

 

被相続人と同居していた親族が土地を取得する場合、以下の2つの要件を満たす必要があります。

 

 

要件1.継続居住要件
相続開始時から相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)まで、その家に継続して居住すること

 

要件2.継続所有要件
相続税の申告期限まで、その土地を継続して所有すること

 

 

なお、住民票の住所が同じでも実際には別居していた場合同居とは認められません逆に、住民票の住所が異なっていても実質的に同居していたことが証明できれば、特例の適用を受けられる可能性があります。

 

 

<3> 別居親族が相続する場合(家なき子特例)

 

被相続人と別居していた親族でも、一定の条件を満たせば「家なき子特例」として適用を受けることができます。主な要件は以下の通りです。

  • 被相続人に配偶者や同居していた相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、自己または配偶者、3親等以内の親族、特別の関係がある法人の持ち家に住んでいないこと
  • 相続税の申告期限まで、その土地を継続して所有すること

 

平成30年度の税制改正により、家なき子特例の要件が厳格化されたため、適用できるケースが限定されています。

 

 

なぜ「家なき子特例」と呼ばれるのか

小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等(居住用の土地の評価減)は、原則として被相続人の配偶者か、被相続人と同居していた親族にしか適用できません。

 

しかし、親の介護や仕事の都合などで同居はできなかったが、将来的に親の自宅を相続して住み続けたいと考える「子」などが、特例の適用を受けられないのは不公平だという声がありました。

 

この特例は、そうした「親の家(実家)に住んでいない(同居していない)子」であっても、「自分の家を持っていない」という条件を満たせば、親の居住用宅地について特例の適用を認める救済措置として設けられました。

 

正式名称が長く複雑であるため、特に「3年以内に自分の家(持ち家)を持ったことがない」という厳しい要件から、「家を持っていない子」という意味合いで、いつしか「家なき子特例」という、親しみやすい?通称で呼ばれるようになりました。

 

 

<4> 老人ホーム入居のケース

被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、以下の要件を満たせば特定居住用宅地等に該当し、特例の適用を受けられます。

 

  • 被相続人が要介護認定または要支援認定を受けていたこと
  • 老人ホームに入居した後の自宅が賃貸に出されていないこと
  • 都道府県に届け出が出されている老人ホームに入居したこと

 

 

 

<5> 二世帯住宅における特定居住用宅地等の扱い

二世帯住宅については、対象の住宅が区分所有登記をしているか否かによって特例の適用可否が変わります。区分所有登記というのは、1つの建物に複数の登記(所有者)が存在する登記形態で、通常は分譲マンションなどで取られる形態ですが、二世帯住宅でも利用されることがあります。

 

 

パターン1.区分所有登記をしている場合

同居とは認められず、特定居住用宅地等の特例の適用を受けることができません

 

例えば1階と2階で親と2世帯で住んでおり、それぞれ区分所有登記をしていた場合、それぞれ独立した「建物」として考えるので、特例の適用においては同居と認められません。

 

 

パターン2.区分所有登記をしていない場合

特例の適用を受けることができます。

 

平成26年の相続税法改正までは、区分所有登記をしていなくても、玄関が2つあり内部で行き来できない分離型の二世帯住宅の場合は、同居と言えず特例が受けられませんでしたが、改正以後、親単独名義または親子の共有名義であれば特例を受けられるようになりました。

 

 

 

<6> 複数の特定居住用宅地等がある場合

被相続人が複数の土地を所有しており、特定居住用宅地等に該当する土地が複数ある場合、小規模宅地等の特例を適用する土地を選択することができます。選択した土地の面積の合計が限度面積(330㎡)以下の場合複数の土地に小規模宅地等の特例を適用できます。

 

 

 

4.2025年問題と小規模宅地等の特例

 

団塊世代が後期高齢者となり、相続件数が急増する「2025年問題」により、小規模宅地等の特例の適用が難しくなるケースが増えています。

 

 

老老相続による課題

親子がそれぞれ既に生活基盤を築いているため、「同居」や「生計を一にする」要件を満たせないケースが増加しています。子ども世帯が別居している、または既に自宅を所有しているといった事例では、特例が利用できず相続税負担が大きくなる可能性があります。

 

同居要件の厳格化

実務上、「同居」の判断は厳格化されています。単に住民票の住所が同じというだけでは不十分で、実質的な共同生活の実態が求められます。

 

 

5.特例適用時の重要な注意点

 

 

相続税申告は必須

特例の適用により相続税の納税額が0円になった場合でも、税務署に相続税の申告書を提出する必要があります。申告を忘れると特例が適用されず、本来不要だった相続税を支払うことになります。

 

遺産分割協議の完了

特例を適用するには、相続税の申告期限までに遺産分割協議を完了させる必要があります。遺産分割が確定していない状態では、原則として特例を適用できません。

 

 

 

6.具体的な節税効果

 

小規模宅地等の特例の節税効果を具体例で見てみましょう。

 

【事例1:限度面積内の場合】

  • 自宅の土地:評価額4,000万円(面積300㎡)
  • その他財産:2,000万円
  • 相続人:子ども2人

 

特例を適用した場合

  • 土地の評価額:4,000万円×20%=800万円(80%減額)
  • 相続財産の合計:2,800万円
  • 基礎控除(3,000万円+600万円×2人):4,200万円
  • 課税遺産総額:0円
  • 相続税額:0円

 

 

【事例2:限度面積を超える場合】

  • 自宅の土地:評価額4,000万円(面積400㎡)
  • その他財産:2,000万円
  • 相続人:子ども2人

 

特例を適用した場合

330㎡までが減額対象となるため、

  • 減額額:4,000万円÷400㎡×330㎡×0.8=2,640万円
  • 土地の評価額:4,000万円-2,640万円=1,360万円
  • 相続財産の合計:3,360万円
  • 基礎控除:4,200万円
  • 課税遺産総額:0円
  • 相続税額:0円

 

このように、特定居住用宅地等の特例を活用することで、数百万円から数千万円単位の節税効果が得られます。

 

 

7.まとめ

 

小規模宅地等の特例、特に特定居住用宅地等の特例は、相続税対策において非常に効果的な制度ですが、適用要件が複雑で判断が難しいケースも少なくありません。特に2025年以降は、ライフスタイルの変化や制度解釈の厳格化により、従来適用できたケースでも特例が使えない可能性が増えています。

 

 

配偶者、同居親族、別居親族(家なき子)など、相続人の立場によって要件が大きく異なるため、相続が発生した際は、できるだけ早い段階で相続税に詳しい税理士に相談し、特例の適用可否を確認することをお勧めします。適切な対策を講じることで、家族の生活基盤を守りながら相続税の負担を大幅に軽減することができます。

 

当事務所では、遺言・相続手続について税理士・司法書士と提携してトータルサポートしております。

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