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#023『住所変更登記のメールアドレス提供義務化とは?』

福岡・博多駅徒歩1分の行政書士事務所 『LEGAL BASE』 代表のSanukiです。

2025年4月21日から、不動産登記制度に大きな変更が加わりました。所有権移転登記や保存登記といった不動産の名義変更を行う際に、メールアドレスを含む「検索用情報」の提供が義務化されました。

 

この制度変更は、2026年4月1日から始まる住所変更登記の義務化に向けた準備措置であり、所有者不明土地問題の解決を目的としています。本記事では、メールアドレス提供義務化の詳細や実務上の注意点を徹底解説します。

 

【2025年4月21日施行】住所変更登記のメールアドレス提供義務化とは?

 

 

検索用情報とは?提供が必要な5つの項目

 

2025年4月21日以降、不動産登記申請時に提供が必要となる「検索用情報」には、以下の5つの項目が含まれます。

  1. 氏名
  2. 氏名のふりがな(外国籍の方はローマ字表記)
  3. 住所
  4. 生年月日
  5. メールアドレス

このうち、氏名と住所は従来から登記申請書の記載事項でしたが、ふりがな、生年月日、メールアドレスの3項目が新たに追加されました。特にメールアドレスの提供は、今回の法改正における最も注目すべき変更点です。

 

 

 

なぜメールアドレスが必要なのか?制度の背景

 

メールアドレス提供義務化の背景には、「所有者不明土地」の増加問題があります。現在、住所変更登記には期限がなく、多くの不動産所有者が転居後も登記を更新せず放置していました。

 

2026年4月1日からは住所変更登記が義務化され、変更から2年以内に登記しないと5万円以下の過料が科される可能性があります。しかし、義務化だけでは「うっかり忘れ」を防ぐことは困難です。

 

そこで導入されるのが「スマート変更登記」制度です。法務局が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)と登記情報を定期的に照合し、住所変更を検知すると、所有者にメールで通知します。所有者が承諾すれば、法務局が職権で住所変更登記を行うという仕組みです。

 

メールアドレスは、この事前確認のための重要な連絡手段として活用されます。

 

 

対象となる登記手続きは?

 

メールアドレスを含む検索用情報の提供が必要となる主な登記手続きは以下の通りです。

  • 所有権移転登記 (売買、相続、贈与など)
  • 所有権保存登記 (新築建物の最初の登記)
  • 所有権更正登記 (登記内容の誤りを修正する登記)
  • その他、所有権の登記名義人となる登記

ただし、所有権の登記名義人が法人または海外居住者の場合は、検索用情報の提供は不要です。

 

 

メールアドレスがない場合はどうする?

 

メールアドレスを持っていない方や、提供したくない方も安心してください。メールアドレスがない場合でも登記申請は可能です。

 

申請方法

 

オンライン申請の場合:  「その他事項欄」に「権利者○○につきメールアドレスなし」または「登記名義人につきメールアドレスなし」と記載します。

 

書面申請の場合:  メールアドレス欄に「なし」と記載します。

 

メールアドレスを登録しなかった場合、法務局からの職権変更登記に関する確認は、登記上の住所へ書面で送付される予定です。

 

既に不動産を所有している方への対応

2025年4月21日時点で既に不動産を所有している方も、スマート変更登記の恩恵を受けることができます。その場合は、別途「検索用情報の申出」という手続きを行う必要があります。

 

この申出は、何らかの登記と同時ではなく、単独で行う手続きであり、書面またはオンラインで実施できます。2026年4月1日の住所変更登記義務化に備えて、早めの申出をお勧めします。

 

 

メールアドレス登録時の注意点

 

本人のアドレスを使用する

原則として、不動産所有者本人が使用するメールアドレスを提供してください。司法書士などの代理人による申請の場合でも、代理人のアドレスではなく、登記名義人本人のアドレスが必要です。

 

正確な情報を記載する

メールアドレスに誤りがあると、法務局からの重要な通知が届かなくなります。特にオンライン申請では入力ミスに注意し、書面申請の場合は文字の誤認を防ぐため、メールアドレスのふりがな(アルファベットの読み方)も記載することが求められています。

 

長期間使用できるアドレスを選ぶ

不動産は長期間所有するものです。頻繁に変更する可能性のあるアドレスよりも、長期間使用できるメールアドレスを選択することをお勧めします。

 

メールアドレス変更時の対応

登録したメールアドレスを変更する場合は、法務局に変更申請を行う必要があります。変更時には、登録完了時に通知される10桁の「認証キー」が必要となりますので、大切に保管してください。

 

プライバシーは守られる?

検索用情報のうち、氏名と住所は従来通り登記簿に記載され、誰でも閲覧可能です。一方、ふりがな、生年月日、メールアドレスは法務局内で管理され、登記事項証明書にも記載されません。したがって、不特定多数の人に知られることはありません。

 

親族のアドレスを使用してもよい?

「自分のメールアドレスがないので、家族のアドレスを使ってもよいか」という質問が多く寄せられています。

 

原則として本人のメールアドレスを提供することが求められますが、法務局が提供されたアドレスの本人確認を行う術はないため、実務上は親族のアドレスでも受理される可能性が高いと考えられています。ただし、正式には本人のアドレスを使用することが推奨されます。

 

DV被害者などへの配慮

スマート変更登記では、なぜ事前に所有者の承諾を得るのでしょうか。それは、DV被害者など、最新の住所を加害者に知られたくない方への配慮があるためです。

登記簿は誰でも閲覧できるため、職権で自動的に住所変更登記を行うと、知られたくない相手に現住所が判明してしまう恐れがあります。そのため、必ず事前に本人の意思確認を行う仕組みとなっています。

 

      

 

 

実務家からの評価と課題

 

今回のメールアドレス提供義務化について、司法書士など実務家からは賛否両論の声が上がっています。

 

批判的な意見

  • メールアドレスのふりがな記載の必要性に疑問
    現在の登記申請はほとんどがオンラインやパソコン作成文書で行われるため、手書きの誤読を防ぐためのふりがなは時代錯誤ではないかという指摘があります。

  • メールチェックの習慣
    多くの方が日常的にメールをチェックする習慣がなく、ショッピングサイトやプロモーションメールに埋もれて見逃す可能性が高いという懸念があります。

  • 長期的な使用の不確実性
    何十年も使い続けるかわからないメールアドレスを登録することの実効性に疑問を持つ専門家もいます。


肯定的な意見

  • 法務局の業務効率化
    メールでの通知は、書面郵送と比べて法務局の業務を大幅に効率化できます。

  • 迅速な情報伝達
    書面よりもメールの方が迅速に所有者に情報が届く可能性があります。

 

 

不動産取引関係者が知っておくべきこと

 

不動産業者、仲介業者、金融機関など、不動産取引に関わる全ての方々は、この制度変更を理解しておく必要があります。

特に仲介業者は、顧客から「メールアドレス提供の説明」を求められるケースが増えるでしょう。スムーズな取引のために、法改正の内容をしっかり把握し、顧客に適切な説明ができる体制を整えることが重要です。

 

 

【2026年4月1日開始】住所変更登記義務化の全体像

 

メールアドレス提供義務化は、2026年4月1日から始まる住所変更登記義務化の準備段階です。義務化のポイントは以下の通りです。

  • 義務化開始日: 2026年4月1日
  • 対象: 2026年4月1日時点で不動産を所有している方全員(過去に住所変更があった場合も含む)
  • 期限: 住所変更から2年以内に登記申請が必要
  • 罰則: 正当な理由なく期限内に申請しない場合、5万円以下の過料
  • 猶予期間: 2026年3月31日以前の住所変更については、2028年3月31日までに登記すればよい

 

スマート変更登記を利用して職権で登記がされた場合は、義務を履行したものとみなされ、過料の対象にはなりません。

 

 

 

まとめ ~早めの準備と対応を~

 

2025年4月21日から始まったメールアドレス提供義務化は、2026年4月の住所変更登記義務化に向けた重要な準備的な手続です。

 

今すぐ行うべきこと

  1. 不動産を購入・相続予定の方:
    登記申請時にメールアドレスなどの検索用情報を準備する

  2. 既に不動産を所有している方:
    スマート変更登記の利用を希望する場合は、検索用情報の申出を検討する

  3. メールアドレスがない方:
    新規取得を検討するか、「メールアドレスなし」での申請を理解する

  4. 不動産取引関係者:
    新ルールの運用方法を把握し、顧客への適切な説明体制を整える

この制度は所有者不明土地問題の解決という重要な社会的課題に取り組むものです。不動産所有者一人ひとりが制度を理解し、適切に対応することで、より透明性の高い不動産取引環境が実現されるでしょう。

 

 

 

この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。司法書士法順守の為、当事務所では検索情報に関する具体的なご相談はお受けできませんが、提携の司法書士をご紹介させていただきます。

 

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