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#017『公正証書遺言のデジタル化』

公正証書遺言のメリットデメリットと2025年10月から始まるデジタル化について

 

LEGAL BASE行政書士事務所のSanukiです。

 

遺言書を作成する際、「自筆証書遺言」と対をなして知られているのが「公正証書遺言」です。しかし、手続きが難しそう、費用がかかりそう、といった理由で作成をためらっている方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、公正証書遺言の基本的な内容から、作成する上でのメリット・デメリット、さらに2025年10月1日から始まる最新のデジタル化についてまで解説します。ご家族のため、そしてご自身の最期の意思を確実に伝えるために、ぜひ参考にしてください。

 

そもそも公正証書遺言ってどんなもの?

 

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言をしたい方(遺言者)の意思を聞き取って作成する公的な書類です。遺言者が口頭で伝えた内容を、公証人が法律に沿って正確な文章にまとめ、作成します。この手続きは公証役場で行われ、原本は役場で厳重に保管されます。

自分で書く「自筆証書遺言」と違い、形式の不備で遺言が無効になる心配がほとんどないのが、公正証書遺言の大きな特徴です。

 

 

公正証書遺言の5つのメリット

 

公正証書遺言が選ばれるのには、きちんとした理由があります。主なメリットを5つ見ていきましょう。

1.無効になる心配がほぼない
公正証書遺言は、法律のプロである公証人が作成するため、形式の不備で無効になることはまずありません。遺言者の判断能力についても公証人が確認するので、後々家族間でトラブルが起きるのを未然に防ぎます。ちなみに、公証人は、司法試験に合格し、司法修習を終えて裁判官、検察官、弁護士などの法曹資格を取得した方がなります。(原則)

 

2.相続開始後の「検認」が不要
自筆証書遺言は、相続が始まった後、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。この手続きには手間と時間がかかり、相続の手続きがスムーズに進まない原因になりがちです。公正証書遺言は公的な書類なので、検認が不要で相続手続きを速やかに始められます。

 

3.紛失や偽造の心配がない
公正証書遺言の原本は、公証役場で厳重に保管されます。自宅に置く自筆証書遺言と違い、火事や災害、紛失で大事な遺言書がなくなる心配はありません。偽造や改ざんも不可能です。

 

4.病気や高齢でも作成できる
文字を書く必要がなく、口頭で内容を伝えれば良いので、手が不自由な方でも作成できます。また、公証人に自宅や病院などに出張してもらい、作成することも可能です。ただし、遺言者本人が公証人としっかりとした受け答えができる状態でないと作成はできないのでその点は注意が必要です。

 

5.遺言の存在を確実に伝えられる
遺言書があっても、その存在を家族が知らなければ意味がありません。公正証書遺言は、控えや謄本を家族に渡しておくことで、遺言の存在を確実に知らせることができます。

 

 

公正証書遺言のデメリットと費用

メリットの多い公正証書遺言ですが、デメリットも知っておきましょう。

 

1.費用がかかる
公正証書遺言を作成するには、法律で定められた手数料がかかります。この費用は遺産の総額や相続人の人数によって変わり、だいたい数万円から数十万円が相場です。その他に、行政書士への必要書類の取得費用や、証人への報酬もかかる場合があります。

 

2.遺言の内容を第三者が知る
公正証書遺言の作成には、公証人以外に2人以上の証人が立ち会うことが法律で義務付けられています。そのため、遺言の内容が第三者(公証人や証人)に知られることになります。ただ、公証人や証人には法律で守秘義務が定められているため、内容が外部に漏れる心配はありません。

 

 

公正証書遺言の作成手続きの流れ

公正証書遺言を作成する際は、ご自身で行うこともできますが、専門家(行政書士や弁護士など)にサポートを依頼することも可能です。ここでは、専門家が間に入った場合の手続きの流れを解説します。

 

1.遺言内容の決定と必要書類の確認
まずは、遺言で誰に何を渡したいか、という遺言内容を具体的に決めます。専門家は、本人(遺言者)の意向を伺いながら、遺言の目的や財産内容を整理し、必要な書類をリストアップします。

 

2.必要書類の収集
公正証書遺言には、戸籍謄本や不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書、住民票など、様々な書類が必要です。これらの書類は、ご自身で役所に出向いて取得することもできますし、専門家が代行して収集することも可能です。

 

3.証人の手配
公正証書遺言の作成には、証人が2名必要です。法律で定められた証人になれない人(相続人や受遺者など)を除き、友人や知人に依頼することもできますが、守秘義務が守られる専門家(行政書士など)に依頼するのが一般的です。

 

4.公証人との調整・打ち合わせ
遺言内容と必要書類が揃ったら、公証役場に連絡して、遺言書の作成日時や場所などを調整します。通常は、専門家が公証役場とお客様の間に入って、スムーズに進められるよう調整を行います。

 

5.公正証書遺言の作成
指定された日時に公証役場へ行き、公証人、遺言者、証人2名が立ち会って遺言書を作成します。公証人が遺言内容を読み上げ、全員が内容に間違いがないことを確認して署名・押印すれば完成です。

 

 

 

 

2025年10月から始まる「公正証書遺言のデジタル化」

これまで公証役場へ出向いて書面で手続きをするのが原則だった公正証書遺言の作成が、2025年を目処に大きく変わります。法務省の法改正により、10月1日から以下の点がデジタル化される予定です。

公正証書遺言のデジタル化の内容

1.オンラインでの申請や内容確認
インターネットを使って公正証書の作成を申し込んだり、作成された内容を確認したりできるようになります。

2.ウェブ会議システムの活用
公証人との面談や、遺言内容の最終確認がウェブ会議を通じて可能になります。これにより、遠方にお住まいの方や、外出が難しい方でも、場所や時間の制約を気にせず手続きを進められます。

3.電子データでの保管と交付
公正証書の原本は電子データとして作られ、保管されることが基本となります。証明書も電子データで受け取れますが、これまで通り書面での交付も選べます。

 

このデジタル化によって、公正証書遺言はさらに利用しやすくなり、多くの方が確実に自分の意思を残せるようになるでしょう。

 

 

まとめ

公正証書遺言は、費用や手間はかかりますが、その安全性と確実性は他の遺言方式をはるかに上回ります。特に、財産が多い方や、家族間のトラブルが心配な方には、公正証書遺言の高い信頼性が大きな助けとなります。

複雑な手続きや書類収集に不安がある場合は、専門家への依頼を検討してみるのも良いでしょう。大切なご家族のため、そしてご自身の思いを確実に伝えるために、この機会に公正証書遺言の作成を考えてみてはいかがでしょうか。LEGAL BASE行政書士事務所では、個人の資産対策(パーソナル法務)に力を入れておりますので、今後のことをお考えの方はお気軽にお問い合わせください。

 

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